文部省高エネルギー加速器研究機構(KEK)と日本原子力研究所(原研)が平成12年度から共同で「大強度陽子加速器」の建設を開始しました。原子核,素粒子,物性分野の物理からさらに科学の広い分野にまたがって利用される21世紀の日本の加速器です。
この加速器では、3GeV および 50GeV のビームエネルギーで、それぞれ 1MW 級のビーム出力を持つ大強度陽子ビームを実現します。陽子ビームを標的に入射すると、中性子、パイ中間子、K中間子、反陽子などの二次粒子、あるいは、三次粒子であるミュオンやニュートリノが発生します。これらの様々な粒子ビームを用いて、
などを行います。加速器は、原研の東海研究所に設置されます。
計画は第一期と第二期からなり、第一期では、a) 常伝導 400MeV リニアック、 b) 1MWの 3GeV 陽子シンクロトロン(PS)、c) 0.75MW の 50GeV PS、d) 3GeV PS からのビームを用いる中性子・ミュオン実験施設の主要部分、e) 50GeV PS からのビームを用いる 50GeV実験施設の一部、を建設します。第一期の予算総額は約 1335億円で、建設期間は6年を見込んでいます。第二期では、残りの部分を建設します。第一期、第二期を合計した予算は、約 1890 億円を見込んでいます。
大強度陽子加速器は、21世紀の科学を開く最重要の加速器となると思います。この加速器により、ニュートリノ物理、K中間子を用いた物理、パルス中性子ビームを用いた物質・生命科学、ミュオン科学、核変換技術、さらに多岐にわたる応用分野の研究を飛躍的に進めることが出来ます。アメリカやヨーロッパでも大強度陽子加速器に関する計画が進められていますが、米欧に日本を加えた世界の三極の一つとして、日本に大強度陽子加速器が建設されることは、極めて意義深いことと考えております。
(以上,永宮正治氏による大強度陽子加速器についての説明文より要約,抜粋)
本原子核・物性合同コロキウムにおいては,「大強度陽子加速器」の総責任者である永宮正治教授に計画の概要とそれによって開拓される21世紀の科学について講演していただきます。