銀河宇宙の歴史を解明すべく遠方の古い恒星の各種元素量の観測が天文衛星・地上望遠鏡を用い精力的に行われ、又太陽系形成以前の記憶を保持する隕石中の各種元素量の分析が進み興味ある同位体異常の報告がなされている。これら観測に基づき構築される「恒星進化と元素合成」の模型は銀河宇宙の歴史解明に利用される。そしてこの模型構築には恒星内での元素合成をシミュレートする地上実験が不可欠である。
ところで中性子は100neVから~1GeVまでの幅広いエネルギー領域にわたり基礎物理・学際科学研究において特異なプローブとして利用されている。この中、恒星内で元素合成を起こす温度(~1億度)に相当するkeV中性子は上記地上実験室に有効であり多様な反応を用い生成されてきている。講演では我々グループによるkeV中性子を用いた天体核物理の研究を紹介する。次いで建設中のJAERI-KEK大強度加速器施設で陽子の核破砕反応により生成される高強度パルス中性子に着目し、宇宙核物理と原子力関係の研究者が共同提案しようとしている標記研究計画の概要、そして同施設における天体核及び原子核物理の研究計画について紹介する。