理化学研究所において進行中の、理論天体核プロジェクトを紹介する。 44Ti等を合成する爆発的元素合成過程(αプロセス)、引き続いて起きると考えられている、Rプロセス元素合成過程、これら元素合成の天体環境を与えている重力崩壊型超新星の爆発メカニズムを、統合的に理解することが、最終的な目標である。
44Tiは、天体核物理のなかで最も重要な放射性同位元素といわれている。その主な理由は、44Tiの合成量が超新星爆発の理論モデルを制限する要となるからである。講演では、まず、このテーマについての最近の研究成果を、 44Tiの合成量が、何故、どのように爆発モデルに制限をつけるかということに主眼をおきながら、超新星残骸の天体観測(X線・ガンマ線)とからめて議論する。次に、2次元非球対称超新星爆発モデルについて短く紹介する。なぜ球対称より非球対称爆発を考えるべきかを明らかにした上で、我々の最近の成果をポイントをしぼって紹介する。我々のグループのオリジナルの主張は、ニュートリノ輻射に、合理的に期待できる程度の非等方性が生じていれば、爆発エネルギーを飛躍的に増大できる、という点である。爆発シミュレーションは、いまだどの研究グループも成功させられないでいるが、我々の主張は、これを成功に導くひとつの有力な要点として、国際的に認識されつつある。最後に、αプロセスとRプロセス元素合成を一括して解く大規模ネットワーク計算ついて述べ、理論の立場から今後のRIビームファクトリー計画におけるRプロセス実験戦略へ、どのような貢献ができるかを考える。