クオークをよく見てる世界

どんな風に世界を見ているの?

 私たちの身の回りにあるものは、いろんな形、色、感触をしていますが、今までの科学の発展によりそれが、素粒子という根源的な物質により形作られていることが、段々とわかってきました。例えば、鉄の塊は非常に多数の鉄の原子から構成されていて、その鉄原子すらも陽子、中性子、電子から作られていて、さらに陽子、中性子はさらにクオークと呼ばれる素粒子からできています。

しかし、物質がただ存在するだけでは、今ある私たちの見ている多様な世界は造られません。人間社会も似たようなものです。多くの人々が生きていますが、それだけでは社会になりません。コンビニで店員とちょっとした会話をしたり、友達のグループがいつの間にかできていたり、世界中でPPAPが流行ったり、はたまた誰とも関せず1人でいたり。この世界は、構成要素とその間を取り持つ関係によって豊かな様相を見せているのです。

ハドロンや素粒子の物理学ではこれを、世界を構成する物質の最小単位で話をします。つまり、クオークやレプトンと呼ぶ構成要素と、身近にある電磁気力とか、原子核を陽子、中性子を結びつけて作る強い力、放射性崩壊を媒介する弱い力という相互作用を包括的に記述する「標準模型」を使って、この世界の話をしたいのです。

 最近の物理学では、この標準模型を使って未知の物理を予想したり、一方で標準理論では説明できないような新しいことを見つけようなど、標準模型を起点とした研究が盛んになされています。

ハドロン物理ってどんなもの?

数個のクオークやグルーオンが集まってできた粒子のことをハドロンと呼びますが、ハドロン物理学では標準理論の中でも特に、強い力とクオークの関係に興味があります。

私たちに身近な電磁気力は、二つの磁石を使うと分かる通り、近いほど強く、遠いほど弱く働きます。しかし、強い力はまるでゴムのように、いくら遠くへ引っ張っても力が緩むことはありません。これをクオークの閉じ込めと呼び、ハドロンの特徴的な振る舞いです。一方で、温度や密度が高い極限的な状況ではクオークが閉じ込められていない時もあります。これは、クオーク・グルーオン・プラズマと呼び、宇宙初期で実現されていたと考えられています。関係は水と水蒸気に似たようなものですね。

ハドロンとクオーク・グルーオン・プラズマなどの状態変化がどのようになされたか、しっかりと理解するのはハドロン分野の大きなテーマです。

どうやって計算するの?

クオークとグルーオンの関係を厳密に数式の変形だけで解くことは人の手に追えません。そこで、格子QCDというコンピューターを使った計算でそこに迫ります。いわば、デジタル画像のようなものです。そのままの景色は保存できないけれど、ピクセルに分割すれば保存できます。格子QCDでは連続的な空間をピクセルのように分割します。

この方法を使うことで、実際に閉じ込めを再現するような結果を得られたり、まだ見ぬハドロンの質量を予言したりすることができます。方法論は非常に難解ですが、別ページではその一端を実際のプログラムを用いて体験することができるでしょう。

伝えたいこと

どんな粒子があるかということだけでなく、複数の粒子が集まるとどの様に振る舞うのかを問うことが、私たちの見ている世界を理解することにつながります。ここでは、断片的な情報だったり言葉だけの説明となりますが、実際に物理学を勉強すればこれらの話を数式を使ってより丁寧に、深く理解することができます。勉強してみてください。