Sendai Nuclear Science Colloquium (No. 205)

超重核領域における融合分裂過程の動力学的機構の解明

有友 嘉浩

フラロフ核反応研究所(ロシア)

日時:2005年11月18日(金) 16:15-

場所:原子核理論セミナー室(総合研究棟10階1021号室)

近年、超重元素合成の実験的研究は活発さを増し、2004年にはロシアのドウブナーで115番元素および113番元素の2つの新元素が合成されたとみなされるシグナルが確認された。同年、理化学研究所でも113番元素が合成されたと考えられるシグナルが確認され、現在国際間でこのような競争が激化してきている。本研究の目標は超重核領域での反応理論を構築し、融合分裂過程のメカニズムを解明し、さらに実験計画に有益な情報を与えることである。 最終的な目標は超重核の蒸発残留核断面積を求めることであるが、絶対値が数ピコバーン程度という希少な現象を精度良く扱うには現在の理論の枠組みでは不十分であり、モデルの改良や不定なパラメーターの確定が不可欠である。したがって、現段階で蒸発残留核断面積を直接実験データと比較して議論することはせず、まず蒸発残留核断面積を求める際に不可欠な融合断面積を高精度で得るために、融合分裂反応機構の解明に焦点を当てた我々の一連の研究を紹介する。極微な融合確率を扱うために散逸揺動模型を導入し、原子核の変形空間における形状の時間発展(軌道)を追跡することで融合分裂過程の解明を試みた。さらに詳細に解析するには、分裂片の質量分布だけでなく、中性子放出多重度を用いることが有効である。計算における軌道の行程の長さは実験では中性子放出多重度と相関関係がある。すなわち軌道の時間尺度と中性子放出の時間尺度は対応し、このことを使って融合分裂過程の詳細な解析も報告する。

※16:00より茶菓を準備いたします。