Sendai Nuclear Science Colloquium (No. 221)

K 中間子ヘリウム原子分光実験〜 eV の精度をめざして 〜

板橋 健太

理化学研究所研究員

日時:2007年05月25日(金) 15:00-16:30

場所:核理研3階大会議室

最近行った、負電荷のK 中間子がヘリウム4に束縛した系の分光実験について説明する。水素からウランまで様々な核種に対して、K 中間子原子はX線分光の手法によって、エネルギー準位が計測されている。そのエネルギー準位は、電磁相互作用から計算された値と比べて、強い相互作用による影響の分ずれるため、そのシフトを精密に計測することにより、低エネルギー極限での強い相互作用についての情報を得る事が出来る。これまで計測されたK 中間子原子のエネルギー準位を多くの核種に対してプロットすると、実はヘリウム(と酸素)の場合のみ、系統的な予想から大きく外れてしまい、この事はK中間子ヘリウムパズルとして知られていた。本実験は、このパズルの解決を目指すものである。ところで、最近 K 中間子が原子核中(原子中ではない点に注意)に深く束縛され、中心密度が通常の核密度の数倍から十倍にまで及ぶ可能性が示され、数の探索実験が行われた。K 中間子原子の分光実験で得られる情報は、K 中間子原子核の存在について制限を与える可能性がある。本セミナーでは、eV の精度での分光を目指した、KEK-PS E570 実験について解説する。