Sendai Nuclear Science Colloquium (No. 232)

2 MeV/c2 付近の軽い中性粒子の観測

坂井 光夫

東京大学名誉教授(元東京大学原子核研究所長)

日時:2008年07月11日(金) 16:00-

場所: 東北大学 大学院理学研究科総合棟7階 743号室

 1986年アメリカOak Ridge 国立研究所(ORNL)の陽電子とトリウムの散乱実験から陽電子-電子の同時計数スペクトルにピークが観測され、この現象は散乱の際発生した未知中性粒子が陽電子-電子対となって崩壊することによるものであるとの論文が現れた。彼らの仮説が正しいとすれば、散乱体から一定エネルギーを持つ電子線が発生している筈で、われわれ(原子核研究所)はこの電子線の探索を核研大型空芯スペクトロメーターで測定した。約7年間の電子線測定の結果330.3 keVの未知電子線の存在を確認した。ただし対をなす陽電子腺は陽電子線源からの強力な一次陽電子腺のため探索不可能であった。今回のセミナーでは1999年研究所閉鎖直前の夏から秋にかけて行われた同時計数実験について報告する。この実験は全原子核研究所での最後の実験であった。