Sendai Nuclear Science Colloquium (No. 237)

格子QCDによるハイペロン核子相互作用の研究と核構造への展開

根村英克

東北大・理

日時:2009年04月21日(火) 17:00-

場所:大学院講義室(総合研究棟7階745号室)

ハイペロン核子(YN)およびハイペロンハイペロン(YY)相互作用の研究は、ハイパー核の構造研究の出発点となる重要な課題である。しかしながら、ハイペロンの寿命が短いために(〜10^{-10}s)、ハイペロン散乱実験は難しく、例えばΛ陽子散乱実験では断面積のみ、Ξ核子散乱については断面積の上限値が与えられている状況である。そのため、YNおよびYY相互作用を記述する理論的模型は、限られた実験データを再現するように作られてはいるが、実験データの存在しない物理量(例えば位相差)については、模型ごとに異なっている。そのため、軽いハイパー核の束縛エネルギーのデータと、少数粒子系の精密計算方法を組み合わせることにより、そもそもの出発点である相互作用(ハミルトニアン)の望ましい性質を探っていくというアプローチが、これまで取られて来た。最近になって、格子QCDから複数のハドロン間の相互作用を調べる研究が急速に進展している。強い相互作用に対して安定であれば、計算機上でのハイペロンは弱崩壊しないので、散乱実験を計算機上で行うことができる。我々は、散乱パラメータだけでなく、ポテンシャルも同時に格子QCD計算から引き出し、将来的に、核構造研究へと応用する計画を現在進めている。本セミナーでは、このような研究の流れの中で、核力ポテンシャルが与えられたときの少数系の核構造(少数多体問題)をどのように解けば良いかに焦点を当てて、議論したいと思います。