Sendai Nuclear Science Colloquium (No. 251)

軽い核の天体核反応

加藤幾芳

北海道大学大学院理学研究科

日時:2011年08月01日(月) 16:30-

場所:理学研究科合同B棟721号室

軽い原子核の天体核反応は閾値近傍の状態が持つ原子核構造と深くかかわっている。 その最も良い例が12C 合成のトリプル・アルファ反応である。一方、原子核合成過程を記述する元素合成ネットワーク計算で必要となる反応率を実験的に決めることが出来ない場合が少なくない。そのような場合、理論的に信頼できる反応率を決めなければならない。特に軽い核の反応率を決めるために核構造の情報と同時に低エネルギー核反応を記述する理論的枠組みが必要となる。 ここでは始めに多体共鳴状態の記述をめざして提案された複素座標スケーリング法の 最近の進展を紹介する。さらに、軽い核に対するクラスター模型に複素座標スケーリング法を適用することによって、閾値近傍のクラスター構造を持った束縛状態と非束縛状態を同時に記述することが出来ることを示す。 この新たな方法を用いて、12C 合成のトリプル・アルファ反応をはじめとして、幾つかの軽い原子核の天体核反応の反応率を理論的に計算して、観測されているデータと理解とともにクラスター構造による効果を議論する。