Sendai Nuclear Science Colloquium (No. 252)

原子核の二重ベータ崩壊と核行列要素

武藤一雄

東京工業大学

日時:2012年01月19日(木) 16:30-

場所:理学研究科合同B棟721号室

ニュートリノの放出を伴わない二重ベータ崩壊は標準模型の枠を超えた新しい物理において重要な役割を果たすと期待される。この崩壊過程が観測されたら,ニュートリノがマヨラナ粒子であり,レプトン数を保存しない相互作用が存在することを意味する。ニュートリノの質量については,その絶対値についての情報を得ることができ,また質量の階層を区別できる可能性もある。一方,二重ベータ崩壊の確率は原子核の波動関数に依存する。すなわち,波動関数を用いて計算する核行列要素の不定性が,崩壊寿命から得られるニュートリノの質量の不定性に直接反映される。核構造模型として広く用いられてきた準粒子RPAでは,核行列要素を信頼性高く予言するために詳細な分析がなされてきた。近年,他の核構造模型を用いた計算も報告されているが,模型に依存した系統的な違いが見られる。本講演では,上記の2つの面から,現在我々が原子核の二重ベータ崩壊について理解していることを述べる。