Sendai Nuclear Science Colloquium (No. 256)

原子力と原子核物理

千葉敏

東京工業大学

日時:2012年12月13日(木) 15:00-

場所:大学院講義室(総合研究棟7階745号室)

我が国において原子力は、不幸なことに、出だしから伏見・茅提案を原子核物理学者がつぶし、逆に産官側が湯川先生を原子力委員会から(実質的に)出て行かざるを得なくするというという対立構図からスタートした。このため、長く大学の基礎系研究室では原子力研究はタブーとなり、本来協力できる原子核物理と原子核工学はコミュニティー(人材)、手法、そして語るべき言語までが分離するという状況に陥り国力が削がれてきた。その一方で原子力産業は基礎系学部出身の多くの学生の就職先となり、またRIBF、SPRING-8やJ-PARCを初めとする大型施設の多くは原子力予算の範疇に含まれてきた。これらの施設に対して社会貢献が求められているのはそのためでもある。 昨年の東電福島第一発電所の事故は、社会のインフラが運用を間違うと社会に広範な負の影響を及ぼすことを露呈した。基礎系研究者は放射線分布測定や被爆者のスクリーニングなどに関わり、そのポテンシャルを発揮したが、残念ながら未だに理学、工学両者には大きな溝があるのが事実である。また、震災瓦礫の受け入れがヒステリックに拒否され、東北地方の復興がなかなか進まない一因となって来たが、本来、原子核物理研究者はこれらの問題を良く理解できており、社会に対するメッセージを発信する役割を担うことが可能であるが、上述のような事情のため、その方面では十分な貢献が行えていない。 このトークでは、講演者の主観に基づき、原子力分野において残されているいくつかの問題とそれに対する原子核物理研究者が果たせる役割を例として紹介し、議論のたたき台としたい。

このColloquiumは大学院集中講義の一環として行われます。