Sendai Nuclear Science Colloquium (No. 278)

冷却原子における強相関量子少数多体問題:少数系から多体系へのアプローチ

遠藤晋平

Monash大学研究員

日時:2017年07月27日(木) 16:30-

場所:大学院講義室(総合研究棟7階745号室)

冷却原子気体において、相互作用を実験で自在に制御できるため、 相互作用が発散的に強いユニタリー領域での様々な物理現象が観測できるようになった。ユニタリー相互作用する3体系で現れるEfimov状態という3粒子束縛状態が観測され、また、ユニタリー相互作用する フェルミ多体系の状態方程式の精密測定も行われている。これら原子気体における量子少数・多体系は、 中性子過剰核やαクラスター、中性子星表面等の希薄な核子系と密接に関連しており、盛んに研究されている。 本発表では、まず、冷却原子における量子少数系の研究の進展を レビューする[1]。次に、これら少数系の知見を、量子多体問題へ応用する研究を幾つか紹介する。まず、Bertschパラメータ等の ユニタリーフェルミ気体の低温領域の状態方程式を特徴づける物理量が、 量子少数問題を解くことでおおよそ再現できることを示す[2]。また、高温領域においても、ビリアル展開を用いることで量子少数系の解より状態方程式を精密に再現できることを示す[3]。 最後に、ユニタリーフェルミ気体に質量インバランスを加えることで、3粒子束縛状態が形成され、それらが基本構成要素となった3量体SU(3)フェルミ液体相が現れることを示す[4]。

[1]P. Naidon, S. Endo, Rep. Prog. Phys. 80 056001 (2017)

[2]J. Levinsen, P. Massignan, S. Endo, M.M. Parish, J. Phys. B 50, 072001 (2017)

[3]S. Endo, Y. Castin, Phys. Rev. A 92, 053624 (2015); J. Phys. A 49, 265301 (2016)

[4]S. Endo, A.M. Garcia-Garcia, P. Naidon, Phys. Rev. A 93, 053611 (2016).