Sendai Nuclear Science Colloquium (No. 292)

二重ベータ崩壊原子核行列要素の核構造計算

日野原 伸生

筑波大学計算科学研究センター

日時:2019年09月12日(木) 15:00-16:30

場所:電子光理学研究センター三神峯ホール

ニュートリノを放出しない二重ベータ崩壊はニュートリノの質量階層性や ニュートリノがマヨラナ粒子であることを決定しうるプロセスとして興味を持た れており、日本を始めとする世界各国で崩壊の観測が行われている。二重ベータ崩壊の半減期から電子ニュートリノの有効質量を導出する際に原子核行列要素の理論的な評価が必要となる。殻模型や準粒子乱雑位相近似、原子核密度汎関数を用いた生成座標法などの原子核構造理論によってこの原子核行列要素が計算され ているが、その値は研究グループや手法によって2-3倍程度のばらつきがあるの が現状であり、信頼性の高い理論値が求められている。  セミナーでは最近の原子核行列要素の理論計算について、それぞれの理論の特 徴、近似の入れ方、用いる有効相互作用や含まれている相関の違いなどを紹介し、 原子核行列要素の値のばらつきの原因について議論する。 原子核行列要素は中性子ー陽子相互作用、特にアイソスカラー型の中性子ー陽子 対相関と強く相関することが準粒子乱雑位相近似計算から知られているが、この相互作用の強度を基底状態の実験データからは詳細に決定することができず、原 子核行列要素の不定性の一つの原因となっている。 最近我々が行っている中性子ー陽子対相関の自由度を取り入れた生成座標法計算や、陽子過剰不安定核の基底状態での中性子ー陽子対凝縮の有無の分析、 中性子ー陽子対相関力の決定に向けた原子核密度汎関数理論による取り組みなど の最近の進展についても紹介する。

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