原子核理論セミナー (No. 74-1)

クォーク物質中におけるカラー超伝導の前駆現象

小出 知威

京都大・基研

日時:2002年02月15日(金) 16:45-18:00

場所:原子核理論セミナー室(物理A棟525号室)

近年、カラー超伝導の計算が精力的になされているが、そのほとんどがカラー超伝導相内での系の性質についての研究である。しかしながらカラー超伝導相の臨界温度が低いため、カラー超伝導相そのものの地上での実験的検証は困難ある可能性が高い。そこで、我々は臨界温度より高い温度であっても揺らぎによるクーパー対の生成、消滅が起こりうることに注目した。もしこのような揺らぎの存在する温度領域が十分に大きければ、地上での実験によりカラー超伝導の前駆現象を観測することができ、延いてはカラー超伝導相そのものについての知見が得られる可能性がある。この報告では、QCDの有効模型であるNambu-Jona-Lasinio模型を用いてWigner相でのpair field線形応答を計算し、通常の超伝導と比較して非常に広い温度領域にわたり大きな揺らぎの効果があること、それに対応してカラー超伝導の前駆的な集団モード(ソフトモード)が存在することを示す。さらに、このようなソフトモードの観測量に与える影響について議論する。また、高温超伝導の可能な前駆現象としての擬ギャップ現象との関連についても言及する。