原子核理論セミナー (No. 264)

リチウム6、ヘリウム6の双極子励起モードにおけるクラスター構造の役割

堀内渉

北海道大学

日時:2020年01月23日(木) 16:20-17:50

場所:理学研究科合同B棟721号室

原子核のクラスター構造(分子的構造)は軽い原子核の励起状態にしばしば現れる。本講演では質量数6の原子核(リチウム6、ヘリウム6)における双極子励起クラスター構造の役割について議論する[1,2]。最近の光吸収断面積実験により、リチウム6の電気双極子(E1)励起においてクラスター構造が巨大共鳴ピークに影響を及ぼすという議論がなされた[3]。この反応機構を理解するため、相関ガウス関数法[4,5]により、クラスターを仮定しない完全微視的な6体計算を実行した。E1遷移行列の空間構造を詳しく分析してみると、励起エネルギーによってさまざまなクラスター構造の競合・共存がみられる。典型的な巨大共鳴モード(Goldhaber-Teller (GT) dipole mode [6])に加え、リチウム6の構造に由来する特有の励起モード(Soft GT dipole mode)が発現しうることを示した。また、典型的な不安定原子核であるヘリウム6との比較や、特徴的な励起モードの観測可能性について議論し、軽い原子核の双極子励起構造について理解を深める。

[1] S. Satsuka and W. Horiuchi, Phys. Rev. C 100, 024334 (2019).

[2] D. Mikami, W. Horiuchi, and Y. Suzuki, Phys. Rev. C 89, 064316 (2014).

[3] T. Yamagata et al., Phys. Rev. C 95, 044307 (2017).

[4] K. Varga and Y. Suzuki, Phys. Rev. C 52, 2885 (1995).

[5] J. Mitroy et al., Rev. Mod. Phys. 85, 693 (2013).

[6] M. Goldhaber and E. Teller, Phys. Rev. 74, 1056 (1948).