原子核理論セミナー (No. 292)

磁場中の有限密度QCDにおけるトポロジカルな二次相転移

西村 健太郎

高エネルギー加速器機構(KEK) 研究員

日時:2023年04月25日(火) 15:00-

場所:原子核理論セミナー室(総合研究棟10階1021号室)とオンラインのハイブリッド

[1]は二次相転移を局所的なオーダーパラメータのみによって特徴づけられるものと、さらにトポロジカルな拘束条件が付くものとで二つに分割した。前者は相転移点近傍でオーダーパラメータの相関長のべきで発散する臨界ダイナミクスを示すことが古くから知られており、現在までに多くの研究がなされてきた。一方、後者は現在までに相転移点近傍のダイナミクスの研究は十分になされていない。そこで、磁場中の有限密度QCDで現れるカイラルソリトン格子と呼ばれる、ドメインウォールが磁場と並行な方向に周期的に並んだ結晶状態への相転移ダイナミクスを調べた。我々はドメインウォールの平行移動は相転移点付近で移動速度が0に近づくが、ドメインウォールの変形のような局所的な散逸の速度は有限であることを発見した[2]。よって、トポロジカルに非自明な状態の定常状態への緩和時間は、ドメインウォールのような局在した配位がすでにあるか無いかで初期条件に強く依存することを示した[2]。

[1] De Gennes, P. G. "Phase transition and turbulence: An introduction." Fluctuations, instabilities, and phase transitions(1975): 1-18.

[2] Kentaro Nishimura and Noriyuki Sogabe, arXiv: 2304.01264 [hep-th]