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講義

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三者共通講義

講師 : 土岐 博 氏 (大阪大学物理研究センター)

講義題目 : 場の理論と実験から学ぶパイ中間子が織りなす原子核物理

要旨

湯川粒子であるパイ中間子は原子核の構造に決定的な湯川粒子であるパイ中間子は原子核の構造に決定役割を果たしている。パイ中間子交換力の主成分であるテンソル相互作用は標準の多体理論であるハートレーフォック理論では取り扱うことができず、新しい多体理論を必要としていた。この新しい多体理論の創出で原子核物理は場の理論の研究対象となった。

場の理論(ゲージ理論)から話を始めて、NJL理論(南部理論)の話をし、カイラル対称性の破れの物理を紹介する。NJL理論のボソナイゼーションを紹介し、シグマモデルラグランジャンを議論する。その特徴を生かした原子核物理の記述法を紹介する。新しい多体理論による数値計算の結果を実験と比較する。さらに、現象論的な核力との比較を行い、核力から記述する原子核物理との比較を行いたい。ボソナイゼーションの辺りでは高密度でのクォーク物質がどのような特徴を持つかの議論も取り込みたい。

夏の学校では実験の人も多く参加しているようなので、出来るだけ式の細部の議論は控え、どのように考えることによってどのような式を導出できるかをお話ししたい。パイ中間子を陽に扱うことが可能になったことで、多くの実験データを新しい観点から議論することが可能になった。さらには新しい実験データを必要としている。これからの原子核物理の理論・実験での発展の方向を議論したい。多くの若い研究者との議論を楽しみにしている。

講義スライド




原子核パート講義

講師 : 岡 真 氏 (東京工業大学)

講義題目 : ハドロンスペクトロスコピーの現状と問題点

要旨

ハドロンのスペクトルはその基本理論である量子色力学が強い結合定数をもつために、複雑で多彩な構造を示している。その理解には、(1)クォークの質量と(2)励起エネルギーの2つの変数が重要な役割を果たしている。たとえば、チャームやボトムなどのヘビークォークでは、低い励起状態ではポジトロニウムに模せられる比較的簡単な構造が現れるが、メソンへの崩壊の閾値を超えると分子共鳴状態が現れることが最近の研究で強く示唆されている。一方、軽いクォークのダイナミクスではカイラル対称性とその破れが主要な役割を果たし、ストレンジクォークは両者の中間で特異な性質を示す。このようなハドロンスペクトロスコピーの理解の現状と問題点について解説する。

講義資料、講義スライド




講師 : 福嶋 健二 氏 (慶応大学)

講義題目 : 高温高密度QCDの相図

要旨

有限温度密度QCDのもつ大局的対称性と、理論計算の方法について、基礎的な事項から始めて、実践的に応用できるレベルまで解説する。取り扱う内容は、摂動的QCD計算に始まり、格子上の強結合展開、またこれらの計算に基づいた有効模型の解析まで。ほかにハゲドロン限界温度の概念や、重イオン実験で成功を収めている熱的統計模型なども紹介する。時間が許せば、QCDのカラー数を現実の3から違う値にしたQCD-like模型も話題として採り上げる予定。

講義スライド




講師 : 早野 龍五 氏 (東京大学)

講義題目 : Exotic原子の物理

要旨

Exotic原子は,原子核にμ-,π-,K-,pbar,...など,電子以外の負電荷粒子が束縛された系である.これ以外にも,ポジトロニウム(e+e-),ミュオニウム(μ+e-),パイオニウム(π+π-),反水素(e+pbar)など興味深い系がある.

最近ではmuonic hydrogen(μ-H)のレーザー分光で求めた陽子の半径が電子散乱の結果と大きくズレていることや,反水素原子の磁場閉じ込めに成功したことなどが大きく報じられた.

講義ではExotic原子の生成と構造の基礎を述べた後,π中間子原子による核内ハドロンの研究,陽子の半径問題,反陽子原子と反水素原子による物質・反物質の対称性の検証などについて論じる.

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